広告音楽ハンドブック作成にあたり
信義を守ること

「CM音楽の使用に関する契約モデル案」がまとまりました。
ACC各担当委員の長年にわたる真摯な取組の成果であり、ご努力に厚い敬意を表します。
私は‘71年のJAM設立に参画したひとりです。その経緯を知ってくれていたJAM事務局長より、「モデル案」の討議も深まり、まとめへの最終段階に入った時期に、委員会への参加を勧められ、何回か出席いたしました。ひとりひとりの委員たちがお互いの顔、目を見合わせての討議の場は、真剣な中にも心地の好い空気が流れていました。広告音楽の歴史を繙くと、1951年9月に民放のラジオ局から三木トリロー先生のコマーシャルソングが放送されたことから始まり、今年で49年の年輪を重ねています。
 JAMは1971年に設立されました。当時、制作の実務を担うプロデューサーであるJAM理事たちと、広告音楽の著作権を中心とした取引関係を法律家に相談、判断を仰いだことがあります。「著作者・著作隣接権者の権利は明確であるが、広告目的で委嘱されていることを踏まえ、委嘱者・受託者の間で取引の契約を結ぶことが必要である」と助言を受けたことがあります。そのことを受け、作家・実演家(著作者・著作隣接権者)たちとも交流を持ち、委嘱者との使用契約について条件内容の討議を重ねたこともありました。広告業界は広告商取引に契約書をあまり使わない体質があって、広告音楽についても公式には取引契約を結ぶことの実現はありませんでした。そんな環境の中でも、広告表現は日々制作されつづけていて、個々には必要に応じて使用条件を明確にし、相互信頼に基づいて契約書を取り交わす例も増えていたのではないかと思います。このたび、ACC・JAM各委員の5年にも渡る粘り強い協議が実り、「広告音楽の使用に関する確認書」の発表となりました。源流の一滴として、感慨を抱きます。

 私は広告音楽を制作する仕事を長く続けております。継続の原動力についてじっと考えてみました。ふたつあります。
 
●ひとつは、時代時代に現れる才能(表現者)たちとの広告音楽創造のコラボレーション(共同作業)に、こよなく魅力を感じていること。
 
●もうひとつは、表現者(著作者・著作隣接権者)たちとの関係に信義を重んじていること。

 委嘱制作に於ける広告表現創造のコラボレーションは、広告プランナー、コピーライター、CF演出家、作詞・作曲家、演奏家、歌手、それぞれの表現者たちが、委嘱テーマに相対して触発し合います。そうして生まれた音楽が、メディアを通じ広告でありつつ自立した音楽として視聴者の心の財産となることがあります。作詞・作曲家(著作者)の創造を、歌手・演奏家(著作隣接権者)は肉体を伴い表現する、それも精神の所産だと思います。その創造の、産みの苦しみや創るよろこびを共にする者として、人の心の財産となることを喜ぶと同時に、人の精神の働きを尊重して頂かなければと強く実感します。

 さらに制作者にとってとても大事なことがあります。それは委嘱者に対し、また著作者・著作隣接権に対して確実に行わなければならない実務です。このたび発表された「広告音楽の使用に関する確認書」を規範として、委嘱者との交渉を持ち、ひとつひとつの仕事(著作物)についての契約を成立させる、それを受け、受託者(制作者)として著作者・著作隣接権者との間で調整された条件に基づき受益したものの分配等の責務を果たすことです。

 21世紀(デジタル時代)に向かって、広告表現、広告音楽はどう変容していくのか、変わらないのは人間が創ること、人間の精神の所産を生かし大切にしていくこと、ではないでしょうか。
 法人社会にあっても、ひとりとひとりの関係がとても大切に思います。そこにお互いの信義が生まれる素地があるからです。

 表現者はみなひとりです。委嘱する者として尊重していかなければと思います。

                                      

日本広告音楽制作者連盟


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