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作家がJASRAC信託者である場合に注意する点
〜経過措置における「一定の範囲」とは?
1 信託契約約款と利用条件
起用した作家が、JASRAC信託契約者である場合、すでにJASRACとの契約が存在しますから、広告音楽の使用範囲等の条件を決めるに際し慎重な対応が必要になります。
このことを「確認書」では、第3条(使用目的と使用範囲)の解説(第2項3)で次のように述べています。
「著作者のなかには、(社)日本音楽著作権協会(以下、JASRACという)と著作権信託契約を交わしている場合があるのでよく留意し、事前に十分協議をして、その取り扱いを定めるものとする。その場合、乙は、著作者よりJASRACの承諾をとるなど必要な措置をとり、本作品の制作・使用に支障が生じないようにはかる。」
作家とJASRACとの契約内容を記したものが「著作権信託契約約款」です。これはJASRACのホームページでも公開されていますから、確認してください。この内、広告音楽に関係してくるのが、約款末尾にある「著作権の信託及び管理に関する経過措置」です。ここに必要な部分だけを紹介しておきましょう。委託者とは作家等信託者のこと、受託者とはJASRACのことです。
(約款条文は平成11年11月現在)
(著作権の信託及び管理に関する経過措置)

1 ……当分の間、委託者はあらかじめ受託者の承諾を得て、次の各号に掲げる場合、その著作権を譲渡することができる。
(1)委託者が、依頼により広告目的のために著作する著作物の放送権を、当該依頼者である広告主に譲渡する場合
2 ……当分の間、委託者(音楽出版者を除く。)は、信託著作権の管理範囲について、あらかじめ受託者の承諾を得て、次に掲げる留保又は制限をすることができる。
(1)委託者が、依頼により広告目的のために著作する著作物について、当該依頼者である広告主に対し、その依頼目的として掲げられた一定の範囲の使用を認めること。
2 留保・制限とは何か
第1項では権利の譲渡について、第2項では留保又は制限について書いています。どちらの場合にも、あらかじめJASRACの承諾を要します。譲渡については、放送権だけであることにご注意ください。その他の支分権についての譲渡は認められていません。また、放送権を譲渡しますと、その作品が後にCD化され、放送で使用された場合に、使用料が作家に入らなくなります。放送権とはCM放送の権利だけではありませんから、十分な注意が必要です。
仮に、放送権を譲渡するとしても、譲渡の対価は通常の委嘱料の数倍以上になる場合がめずらしくありませんので、現実問題としては譲渡が実現するケースは稀で、第2項の「留保又は制限」を活用するのが普通です。
「留保又は制限」とは何でしょうか。一般的に言って、作家は全ての支分権をJASRACに信託するわけですが、権利の一部を自分の手元に残しておくこと、JASRACの管理から外すこと、これが「留保」です。一方、JASRACの側から見ますと、作家に残された権利については手が出せないことになります。すなわち「制限」となるわけです。
広告音楽について言えば、2項1号の規定により作家がコントロールできますから、自分で利用条件を決めてよく、「一定の範囲の使用を認めること」ができます。逆にJASRACは、その範囲に関する限り、管理できない(使用料を徴収しない)のです。
ここで問題になるのが「一定の範囲」の解釈でした。一定とは「ある決まったもの」(岩波国語辞典)との意味ですから、おのずと限りがあるはずで、無制限に拡大解釈されてはなりません。しかし、現場では、拡大気味の主張が少なからず見受けられ、一定の範囲をめぐるトラブルが、多年にわたり繰り返されてきました。
今回、「確認書」をまとめるにあたっても、大きな問題になったのが、この「一定の範囲」でした。第3条は「使用範囲」を明確に取り決めることを求めていますが、
JASRAC信託契約者の作品であった場合に、「使用範囲」がJASRACが考える「一定の範囲」を超えると問題を生じます。
そこでJAMでは「一定の範囲」を明確に把握する必要を感じ、JASRAC理事長宛に「一定の範囲についてのおたずね」を送り、回答を求めました。
その返信が「『一定の範囲についてのおたずね』について」です。この中でJASRACは、約款の経過措置で留保・制限を認めている理由に「約款の変更を行った当時の現実の慣行に配慮した」ことを挙げ、故に一定の範囲については「制定当時現実に行われていた慣行以上に拡大することがないよう厳密に解釈しており」と記しています。
3 慣行に配慮したガイドライン
では、「約款の変更を行った当時」とは、いつごろのことなのでしょうか。改定約款として文化庁の許可がおりたのは、昭和55年(1980)年3月でしたが、改定の準備が始まったのはそれ以前、昭和49年(1974)ごろと思われます。
当時JASRACは、放送使用料を曲別許諾方式で管理していました。それをブランケット方式(包括許諾)に変更するため、民放連、NHKと交渉に入りました。問題になったのがCM等委嘱により制作された楽曲の扱いです。放送局側は委嘱楽曲を管理から外すことを強く主張し、協議は長引きました。結果、誕生したのが「経過措置」だったわけです。
したがって「当時」とは、民放開局の昭和26年(1951)から昭和40年代までを指すと考えられます。そのころのCM楽曲の利用範囲がどのようなものであったのか、事情を知る人も今では少なくなりましたが、テレビ・ラジオでの利用を中心として、他には劇場用CM(予告編の上映時に付随してCMフィルムが流れた)、スーパー等の店頭でのエンドレス・テープによる演奏があった程度と言われています。こうした慣行に基づいて示されたのが下記のJASRACガイドラインです。
経過措置2項1号により留保制限を認める場合のガイドライン

1 書面による契約で利用方法、利用期間、利用地域を具体的に特定し、あらかじめJASRACの承諾を得ること。
2 利用方法は、放送及びこれと付随的に行われる店頭の販売促進催事広告や劇場用CMにおける演奏・上映であること。
3 利用期間は、原則として1年以内とすること。
4 利用地域は、日本国内とすること。
作家がJASRAC信託契約者であれば、信託契約の遵守が当然求められ、留保・制限については上記のガイドラインの示すところを尊重しなければなりません。こうした立場にあることを、広告音楽制作関係者が理解しておく必要があります。
一方、作家がJASRAC信託者「ではない場合」についてはどうでしょうか。JASRACとは無関係ですから、その作家独自の判断による契約でかまわないと言えます。しかし、その作品が、いわゆるCMタイアップ楽曲である場合には、慎重な対応が求められます。こうしたケースではほとんどの場合が音楽出版社との契約楽曲になり、音楽出版社もまたJASRACの信託契約者ですから、信託契約約款にしたがうことになります。
CMタイアップが信託契約の留保・制限条項を活用したものである以上、利用範囲を取り決めるに際しては、上記ガイドラインに則した条件にすることが必要です。
留保・制限の理解という点では、音楽制作関係者であっても十分とは言えず、まして外部の人々にはわかりにくい領域です。
(社)全日本シーエム放送連盟では、平成11年3月、JASRACから講師を招き、広告音楽著作権についての「勉強会」を開催し、上記ガイドラインを含め、委嘱広告音楽に対するJASRACの考え方、取り扱いについての説明を受けています。
こうした動きはJAMとしても歓迎するところであり、JAM自身も広告音楽とJASRACとの関係について、更に理解を深めていくことが大切だとかんがえています。


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